英語力は人間力

自分の意見がない?!

「日本人は文法はよくできている」

これは、私が留学したカナダの語学学校の先生が決まって言う言葉です。

裏を返せば、スピーキング力はないということ。

中学校で学んだ簡単な文章でさえも、口から出てきません。

入学試験では日本人留学生は意外に上位のクラスに入りますが、入ってからが大変。

聞き取れない、話せないという壁にぶち当たります。

私もそのうちの一人でした。

しかし私はここで、もっと重大なことに気がつくことになります。

「最近気になるニュースは何ですか?」というお題が出題された時、ニュース内容と、それに対しての自分の意見をあなたは10秒以内にすぐに答えることができますか?

私を含む多くの日本人が、うーん…と悩むことになります。

一方、他国の留学生はすぐに答えられます。

彼らの答えをよく聞いていると、文法の間違いもありますが、彼らはそんなことは気にしません。

堂々と英語を話し、自分の意見を伝えます。

日本人が答える順番は大抵グループ内の最後の方です。

日本人の課題は、英語を話せるかどうか以前でした。その問いに対して、日本語でも答えることができません。

ある物事などに対しての自分の意見がすぐに出てこないことが、日本人留学生が最初に躓くポイントです。(もちろん、すぐに答えられる方もいると思います。)

私の学生時代の日本の学校教育は、どうしても受験にフォーカスしてしまう傾向がありました。

それを否定しているわけではありません。

ですが、こんなにも人に自分の意見を伝えることに対して無力であると感じざるを得ない経験でした。

これからの子どもたち ー 英語「で」何を学ぶか

子どもたちは、例えば自分の好きなことや興味あることが何か自分でわかっていますか?

サッカーが好きならば、なぜ好きなのか、自分もプレーをするのかなど、それらを言葉で人に伝えることができるでしょうか。

近年、インターネットが普及して世界との距離もグッと近くなり、グローバルな人材育成を日本も進めることになります。

これは、英語を話せることだけではないですよね。

英語を使ってその人が、何ができるのかが重視される時代です。

仮に、英語自体は流暢に話せても、自分の意見がない人を世界は必要としていません。

なぜならば、一歩海外に出たら、英語ができることは当たり前の世界だからです。

「英語ができる」だけでは、その人の強みにならなくなってしまいました。

英語「を」学ぶのではなく、英語「で」何を学ぶかが非常に重要です。

自分の興味を突き詰めていくと、遅かれ早かれ”世界”が待っています。

英語で自分の興味を学ぶことで、世界中の人と意見交換ができることを想像すると、ワクワクしてきませんか?

言葉は、意思疎通のツールの一つにすぎません。

意思表示ができる力が、これからの時代はますます重要になってくるでしょう。

大切なのは、自分の意見をちゃんと伝えられるかどうかです。

英語を使いこなすには、母語での考える力が必要不可欠

自分で考える・そしてそれを伝える力。

物事に対して自分で考える力を養うには、母語での理解が必要不可欠です。

母語はその人のアイデンティティを確立する上で非常に重要な要素です。

国語力は、英語力に大きな影響を与えます。

言語を学ぶということは、その言語の国の文化や歴史を知ることに繋がります。

自国のそれらを学ぶことで、自分のルーツがわかってきます。

どんな時代を経て、現在自分はここに存在しているのか。言語を学ぶことで多くのことが見えてきます。

海外の人から見たら、私たちは「日本人」です。私たちは、日本についてどれだけのことを話せるでしょうか?

例えば、お弁当一つとっても、日本のお弁当文化はもはや芸術です。

私たちが日頃当たり前に過ごしていることが、当たり前でない世界に行ったとき、母語でどれだけ理解しているか、

そしてそれに対しての自分の気持ちを伝えられるかがポイントになります。

思っているだけでは人には伝わりません。

この行為を続けていくことで、意志の形成がなされていき、自己形成につながります。

世界を知っている人と知らない人、日本から見た世界・世界から見た日本などを知ろうとしている人では、価値観や考え方が大きく変わってくると思います。

これは誰かのためではありません。

物事を広く捉えることで、自分の選択肢が増え、自分自身の人生の満足感や幸福感につながっていくと考えています。

こういう話になると、「英語の前に日本語力をあげるべきなのではないか」という論争が始まります。

私はこう申したい。どちらもやれば良いのです。

日本に生まれ住んでいれば、日本語の「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能はできると思います。

お母さんのお腹の中にいる頃から、赤ちゃんにたくさん話しかけてあげてくださいね、とよく言われますよね。

赤ん坊はこの世に生を受けたときから、周囲の音をよく聞いています。

「聞く」ことのストックが何年もされ、2〜3歳頃には、この世の中心は自分!と言わんばかりに、おしゃべりに花を咲かせます。アウトプットの時期ですね。

たくさん「聞く」ことをしていないと、「話す」ことなどできません。

人間の耳は、3歳ごろから急速に発達して7歳ごろまでにほぼ完成されると言われています。

言語習得にとって最初のステップは「聞く」ことなので、この時期を逃してしまうのはもったいないです。

日本語を話し始めたくらいの時期は、日本語も英語も他の言語も、幼児は区別して聞いていません。

あるがままの音を受け入れることができる唯一の時期です。

親や身近にいる人たちが日本語を使っているから、彼らは日本語を話し始めるのです。

おわりに ー 本を知り、英語を知り、世界を知ってほしい

「子どもたちに心豊かに毎日笑顔で健康に過ごしてほしい。困難なことが起こっても自分で解決する術を知っていてほしい」。

私はこの想いで活動しています。

人生は山あり谷ありです。楽しいことがあれば辛いことも必ずあります。

大人になってもそれは変わりません。

子どものうちに、幅広い視野をもつということ、困難時の解決策の探し方を知っていてほしいと願っています。

私はその手段の一つとして「本」を用いています。

あなたの知らない世界を、本が教えてくれます。

日本では毎日のように多くの数の書籍や雑誌が出版されています。

世界も合わせたら…膨大な情報量です。

今はインターネットもあるので、私たちは情報に溢れた世界に生きています。

その中から、自分に必要な信頼性のある情報はどれなのかを選択できる力もこれからの子どもたちには必要です。

この話はこれで長くなってしまうので、また別の機会にしたいと思います。

私は主に、英語の絵本の読み聞かせ等を通して、子どもたちに世界を知る楽しさや面白さを伝えています。

コロナ禍になり、インターネット上でのやり取りもしやすくなりましたが、それもコミュニケーションツールの一つです。うまく使えると良いと思います。

私はなるべく直接会って子どもたちとその空間を一緒に楽しみたいと思います。

本の手触り感、表紙やカバーのデザインの美しさ、色使いなど、五感をフルに満たしてほしいと思います。

味覚は正直難しいかもしれませんが、香りがある絵本もあるんですよ。

子どもたちはとても狭い範囲で生活しています。

本を知り、英語を知り、世界を知る。毎日の生活が彩られる瞬間をたくさん味わってほしいと心から願っています。

りょう・中学校国語科教員
英語は必須の時代になってきています。その上で、本当に必要な力は何か、考えさせられた記事でした。英語も日本語も、自分の意思を伝える手段でしかない。まずは、大人がそれを見失わずにいることが大切だと感じました。テストの点数が大切ではないとは言いませんが、最終的に身に付けたい力は何なのか、明確にしていくべきですね。
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