教師の子どもはいい子に育つのか? Vol. 1 〜教師の専門性ってなんだろう?〜

皆さんは教え育てるプロである教師が子育てをすると、子どもは「いい子」に育つと思われますか?

そもそも『いい子』って何?という声は聞こえてきそうですが、教師目線で伝えると、『将来に社会的自立ができる子』と言ってもいいかもしれません。

教師と保護者。どちらも子どもを育てる大きな責任を持っています。

子どもは保護者と連携して育てるとも学校現場ではよく言われます。

学校教育において教師は教育のプロと言われています。

しかし、私は教師が親になったとき、教師としての親の役割を担おうとしました。

そしてこのように思っていました。

『教師はいい親になれる』と・・・

教師はなんのプロなのか

皆さんは教師は何のプロであると思われますか?

もちろん教育のプロです。教え育てるプロですよね。

辞書を引いてみると「学校で学問を教え子供たちを導く人」(goo国語辞書)とあります。もう少し教育のプロとは何かを考えてみたいと思います。

私は公立小・中学校の教員として7歳から15歳までの子どもたちと学校で一緒に生活してきました。

一年生を担任したときに7歳の子どもがどのように文字言語を学び、教科の学習に入っていくのかを体感しました。

また中学3年(当時は小中一貫校にいたので、中学3年は9年生と呼んでいました)の進路指導に関わり、卒業していく姿から義務教育の9年間で、子どもたちは身体的にも精神的にも文字通り大きく成長することを実感してきました。

このような経験から、私は教師としての自覚と専門性を高めたと思っています。

ここで教師の専門性とは何かということを紐解いておきたいと思います。教師の専門性は大きく三点あると考えています。

  1. 子どもを発達面 特性 子どもの全般的な理解などからくる『子ども理解』
  2. 教材の把握や教科の系統性、どのように指導をしていくか『教科を教える』
  3. 子どもを取り巻く社会を理解し、子どものみらいをつくる『子どもの人格を育てる』ことです。

これらは私なりの経験則から導いたものです。(教育学的にはもう少し深くなります。)

この考えは他業種の友人が一度、ゲストティーチャーとして学校で授業をしてくれた時に彼が言ったことから考えるようになりました。

その友人が特に強調していたのは『教師は子どもを理解して、子どもがわかりやすく、ひきつけられるような話し方や持っていき方、授業の流し方ができるのが教師の強み』ということでした。

子どもがどのように学ぶのかを、理論的に解釈し、『発問』や『学習展開』を駆使して子どもたちをあまり意識せずに学びに導いていたことを思い出しました。

確かに言われてみると、授業の展開や発問、話し方や聞き方、声の出し方に板書の仕方、教材教具の準備や板書計画、ワークシートに机間巡視と教師のスキルは多くあります。

その教師の授業のスキルを支えるのは、子どもの興味をひくような教材や、わかりやすい言葉を選ぶ『①子ども理解』。

教材研究によって、教科の本質や狙いに迫るような『②教科の専門性』。

そして、なぜ教科を学ぶのか、社会や未来の姿を想像して、どの子にも学力と社会性を身に着けさせようとする『③人格形成への実践』なのだと意識するようになりました。

少々裏付けが弱いので文科省のHPを確認しました。すると『教員に求められる3つの資質能力』 (文部科学省, 2022)として挙げられていました。

  1. 教育的な情熱と真剣さ
  2. 教育的力量を身に着けようとする姿勢
  3. 総合的な人間力を高める姿勢 

こう見てみると共通するところはありますね。(あーよかった!)

私が上に書いたような教師の専門性を支えるのが、文科省がいう教師の資質なのだと思います。

また、昔から「教師は五者たれ」という言葉もあります。

  1. 「学者」…豊富な知識を有すること。卓越した問題解答能力を有すること。
  2. 「役者」…子どもとの強い信頼関係、良好なクラス環境を構築する力を有すること。
  3. 「易者」…最新の入試動向・受験情報・進路情報を分析し、的確な進路指導ができること。
  4. 「芸者」…励まし、やる気にさせる力を有すること。
  5. 「医者」…受験生の精神面・体力面で万全のフォローができること。

このように先人たちは教師の資質能力については深く言及してくれています。

ところで、私はこの教育への情熱は当たり前のことだと思っていました。

しかし、先ほどの友人がいつも言っていたのは、『絶対おれには、子どもの前で授業するのは無理やわ。うまく教える自信ないし、毎日、子どもと一緒にいるのはできない』と言っていたことが衝撃的だったこと思い出します。

そうなんです。大人の誰しもが『教育』に対して情熱を傾け、授業をして、子どもを育てられるわけではないということです。

教師は教育のプロであり、子どもを育てるプロなのです。

私は大工さんやお医者さんと同じように専門職としての教師であることを誇りに思っています。

教育のプロだからこそ保護者とは違う、教師にしかできないかかわり方があるのだと思います。

しかし、教師が親になったときに、どのように子どもとかかわり、育てていくのかということは実はとても難しい問いでもあります。

ここで私の中に生じたのが二つの問いです。

「教師はいい親になれるのか?」そして「教師が子育てすると子どもはいい子に育つのか」ということです。

藤澤佑介・中高一貫校教員
教師の子どもはいい子に育つのか?というタイトルにドキっとします。というのも、こんな会話を以前職員室で耳にしたからです。「あの子の親は先生だよ。」「あ~、やっぱりね。」この言葉には明らかにネガティブな思いが乗っかっていました。教師であり、3人の親でもある自分にとっては本当に他人事ではなく、子育てに自信があるわけでも全くないので、自分も裏でそんなことを言われているのかも・・・と思うと胸のざわざわが止まりません。でもこれってきっと「模範たる『教師』である自分は、いい子育てをしているいい親だと言われなければならない」という自分で作り出してしまった呪縛なのかもしれないなと思いました。
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