小学校の英語指導の謎

「なんでこれがバツなの?」

「先生、見て!このアルファベットをバツにされたんだけど、ダメなの?」

そう言ってある公立小学校の5年生が、学校の英語のテストを見せてくれました。

バツになったところを見てみると、Jを以下のように上に横棒を書いたためにバツになっていました。

実は、このようなことはこの生徒だけでなく他にもGをG、KをK、QをQ、RをRと書くとバツになることがあります。

他の学校でどうなのかは分かりませんが、どうやらこの小学校では、教科書のアルファベット表に記載されている通りのブロック体を書かないと、バツにされるようなのです。

私はこの指導は極めて日本的でそこまでの指導は必要ないと考えています。

なぜなら、アルファベットには絶対的な書き順や書き方はないからです。

それらしく書けていればいい、とネイティブから聞いたことがあり、ネイティブの書くアルファベットは癖が強く読みにくいことが多々あります。

それにもかかわらず日本の学校で上記のような文字をバツにする必要があるのでしょうか?

中学校に上がると何が起こるのか?

小学校英語でもう一つ私が危惧しているのが中学校英語にうまく繋がっていない、ということです。

先述の小学校では英語のテストでピクチャーディクショナリーというテキストを見ても良いので、単語のスペルを覚えることをほとんどの子ども達はしません。

でも、中学校へ上がると小学校で既習の単語は読める・書ける・意味が分かるという前提で授業もテストも進みます。

皆さん、読める・書ける・意味が分かるという状態になっていない中1の春を迎えたお子さんになったつもりで考えてみて下さい。

中学校へ上がった途端、授業内容が一気に文法指導へと変わり、更に2021年度の教科書の大幅な改訂により中学校の3年間で学ぶ文法事項が増え、be動詞と一般動詞を同じ時間にサラッとやって終わり、というような早いペースで授業が進んでいったらどう思いますか?

今まで単語を覚える必要がなかったのに突然「書けるよね」という前提でテストされるとしたら、どう思うでしょうか。

負担が大きくて英語が嫌になる可能性が高いと思いませんか?

子供の負担を減らすには?

子ども達の負担を軽減するために考えて欲しいものの一つがフォニックスです。

フォニックスとは、文字と発音の関係性を学ぶ学習法で、読み書きを教えるために開発されたものです。

フォニックスを身につけると7割以上の単語がその規則に則って読めるようになると言われています。

しかし、先述の小学校ではフォニックスを軽くやるだけのようで、音を聞かせるだけのことが多いようです。

フォニックスは読める・書ける・聞き取れるようになるには必要です。

ルールがわかってくれば、スペルを覚えることも約7割の単語で丸暗記に頼らなくて済むようになります。

小学校で今以上にフォニックスを習えば、中学校へ上がってから子ども達がする苦労を軽くしてあげることができると考えられます。

また、小学生ともなると聞くだけではなかなか正しい発音に繋がりません。

この音はこういう口をして、舌はこの位置で、というように日本語による説明があった方が正しく発音しやすくなります。

正しい発音が再現できるようになると、リスニング力も上がります。

フォニックスを学ぶメリットは大きいのに、あまり時間と労力を割いていないことが気になります。

ここでアメリカの子供がどのようにアルファベットを学習しているのかを参考に挙げてみたいと思います。

現在、アメリカに住みお子さんを現地の小学校に通わせている方に確認しましたが、アルファベットは「書き順がめちゃくちゃでも最終的に形が合っていればいい」そうです。

「みんな汚い字を「ジャーン!」と見せているよ。

いずれ手書きからパソコン入力になるし、不要な指導で生徒を苦しめない指導をしている。」というアメリカ、日本とかなり違いますよね。

さらに興味深いのは、アルファベットとフォニックスを同時に教える、ということです。

大文字、小文字を書かせることをしつつ、フォニックスの中でも日常で頻出する音からマスターさせることを意識している、とその方は話しています。

フォニックスを理解すると英単語の7割は読めるようになると言われていますし、アルファベットは文字の名前と音が違います。

「A(エィ)」は文字の名前であり、音は「エィ」ではありません。

日本語も「あ」という文字と音を同時に学びますが、英語は文字の名前と音が一致しないので、より一層フォニックスが大切になります。

こうして見てみると、アメリカと日本では英語指導の重点を置くところが全く違いますね。

第2言語として英語を学ぶ日本の子ども達と、母国語として英語を学ぶ現地の子ども達を一緒にしてはいけないとは思いますし、日本の中でも小学校によって指導方法は違うでしょう。

しかし日本の小学校の英語教育はまだまだ改善の余地がありそうなことだけは確かです。

家庭でできることは?

お子さんがもしアルファベットの書き方でバツにされることがあったら「バツにされて悲しいね。でも、現地の人は書き順も書き方も好きなように書くんだって。だから本当はバツではないよ。」

のように安心させてあげること。

このことがきっかけで英語が嫌いになられたらそれこそ悲しいです。

そして、まだフォニックス指導を受けたことがない場合は受けること。

中学英語の負担を軽くするなら、まずここからです。

ただし、日常的によく使用する単語にはフォニックスで説明のつかないものが多くありますので、絵本や歌、動画などを利用して多くの英語に触れることも忘れないで下さい。

藤澤佑介・中高一貫校教員
アルファベットをバツにされたくだりを読んで浮かんできたことです。小学校2年の息子の担任は、漢字の宿題を非常に丁寧に(厳しく!?)してくださる方なのですが、息子の字は非常に汚く、家で自分を責めている様子を目にします。本当にこの指導がよいのだろうか?と私も胸がざわっとすることがありました。小学校の先生は漢字指導をするマインドでアルファベット指導をしているのかもしれないなあと思いました。
池田文子・元小学校教員
今回、なぜ学校はこのような指導をすることがあるのかと強く考えました。「なぜフォニックスを教えないのか」「なぜスペルを覚えさせないのか」「なぜ中学との接続がうまくいかないのか」。もちろん教員側の勉強不足も大きいと思います。しかし、大きな問題はリソース不足、だと思います。人がいない、時間がない、お金がない、教員自身にも余裕がない・・・そして子どもたちの学習内容も非常に増えていて、負担感も増しています。小学校の教育課程に何を取り入れ、何を手放していくのか、今後もっと議論を深めていかなくてはならないと感じました。
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