「みちあそび」と聞いてみなさんはどんなことを思い浮かべますか?
中には「道で遊ぶなんて危ない!」と怒り出す人もいるかもしれませんね。
ところがこの「みちあそび」、豊かな遊び環境づくりとして大きな可能性を秘めているのです。
子どもの自由な遊び環境を紹介する本連載の初回は住民主体の遊び場づくり「みちあそび」を取り上げます。
「みち」で遊べない子どもたち
子どもが外遊びをしなくなったと言われるようになってからずいぶんと経ちました。
その一つの要因は、遊びの一要素である「空間」が子どものそばから減ったからだと言われています。
たしかに、子どもだけで安全に自由に遊んでいられる空間は、現代の日本では公園や児童館など非常に限られています。
では子どもにとって身近な遊びの空間は本来どこなのでしょうか。
実はその一つが「みちスペース」(1)だと言われています。
考えてみてください。私たちが子どものころ、家の前の道路にチョークで絵を描いたり、縄跳びやスケボーで遊んだりしていませんでしたか?
子どもにとって「みち」とは本来、とても身近な遊び環境なのです。
しかし、現代の日本で子どもが「みち」で遊ぶことはそう簡単ではありません。
交通量も増え、ご近所とのつながりも希薄になり、不審者だって怖い…親にとっても地域にとっても現実的でないように思えるかもしれませんね。
でも…子どもとは本来遊ぶ者たちのはず・・・誰だって、子ども時代は遊んできたし、遊ぶことでさまざまな出会いや経験をしてきたはずです。
それに、子どもたちだって地域社会の立派な住人・・・子どもが遊べない街なんて、あっていいはずがありません。
それなのに、道端で遊んでいたら注意される、公園も友達の家も遠い、遊ぶスペースがない子どもたちはどこで遊んだらいいのでしょうか?
もちろん理由はわかります。
交通量の増えた現代の道路で遊ぶなんて、確かに危なすぎます。
だけど、本当に子どもたちにいろいろなルールを押し付けて、それで済ませていいのでしょうか。
本当は私たち大人が、子どもたちに「危ないから遊ぶな!」ではなく、「この子たちも豊かに遊べる社会にしていくにはどうしたらいいか」をもっと真剣に考えなくてはいけないのではないかと思うのです。
英国で生まれた新しい活動
今から13年前、同じように「なぜ子どもたちは自由に遊べないのだろう?」と考えて行動を起こした母親たちがいました。
英国ロンドンです。
彼女たちは道路を止め、一時的に地域の子どもたちが遊べるスペースを玄関先に作ったのです。
その活動はPlaying Outと呼ばれ、少しずつ広がっていきました。
地域の大人が声を掛けあって、月に数回二時間程度のPlaying Outのセッションを定期的に行うことで、子どもたちが自由に外に出て遊べるようになり、近所の友だちや異年齢の関わりが増えたと言います。
また、その影響は子どもたちだけにとどまらず、地域の人たちのつながりが生まれ、安全な地域づくりコミュニティーの活性化など、地域全体に長期的な変化が起きたのだそうです。(2)
「みちあそび」の良さとは
現在Playing Outは、日本でも「みちあそび」として少しずつ広がっています。
道路の使用許可をとって一時的な遊び場にしたり、地域のお祭りの一角に遊び場を作ったりしています(3)。
日本ではTOKYO PLAY主催の「とうきょうご近所みちあそびプロジェクト」が中心となり、少しずつ全国でも行われるようになってきました。(詳しくはPart3で)
大人が行動を起こすことで、子どもの環境を変え、社会を変えていく事例の一つとして学ぶことの多い「みちあそび」。
みなさんも子どもが自由に遊べる社会って何か、一緒に考えてみませんか?
(2)Playing Out HP https://playingout.net
(3)とうきょうご近所みちあそび https://playbourhood.tokyoplay.jp/
子どもが自由に遊べる社会とは--子どもがありのままでいられること、その環境があること。そして、それを大人も子どももお互いに認め合える社会なのかなと思います。