教師+妻+母親 in 沖縄 Vol.2

ハイタイ。沖縄生まれ沖縄育ちのtokkeです。

前回のコラムを読んで頂いた皆さん、ありがとうございます。

※前回の記事はこちら

前回の終わりに、先生の仕事は遥か斜め上を超えてきたとお伝えしました。

大前提として、私は教師が一番忙しい職業だなんて1ミリも思っていません。

どんな仕事でも大変なことはあると思っています。

また、教師ってこんなに忙しいんだよ!のアピールでもありません。

ただただ、事実のみを書いています。

そして、今この時間も子どもたちのために一つ一つの仕事に向かっている現場の先生達に

私は本当に心からリスペクトを送らせていただきたいです。

それぐらい、みんな必死。教室という小さな空間で子どもたち全員の視線が自分に集まり、多種多様な感情が自分に向けられる日中。

教師・先生という職業に対する価値観がそれぞれの保護者で異なることはもちろん、その様々な価値観に対応する毎日。そして次々とやってくる事務仕事や資料作り。

仕事の線引きがない中で、何のために教師になったんだと悩んでいる先生たちが、子どもたちと笑顔で過ごしていくにはどうすればよいのでしょうか。

 1 沖縄の方言。昼夜問わずあいさつ代わりに使用できる言葉。男性はハイサイ、女性はハイタイ。

「先生の仕事」と聞いて思い浮かぶことは?

新学期の教室整備(机と椅子の数や壊れているものはないか、清掃道具やベランダ周辺の確認&掃除)、職員室の片付けや荷物移動(引っ越しですね)、名簿作り、掲示物の準備、教室の個名貼り、靴箱ラベル準備や貼り付け、学級通信作りや当番活動決めの準備。

上記と並行して、4月1日からすぐに連日会議づくし。

午前中は全体会議、午後は学年会議。次の日も、午前中は全体会議、午後は教科会など。

同時進行なんてできませんよね、時間が全くなかったです。

準備も中途半端なまま新学期を迎えて、すぐに始まる家庭訪問や授業参観などの、資料作り。部活動結成の資料準備などもあります。

すぐに授業も始まるので、授業作りもしないといけません。授業の流れを組み立てて、ワークシート作って、教科書やワークも目を通して頭に入れておかないといけないですよね。

特に、中学校や高校では、下校時刻から始まる部活動もあります。子どもたちに万が一怪我やトラブル等があっては困るので、顧問がついておかなければなりません。

また、学校生活の中で何かトラブルがあれば、個別に対応したり、夕方に保護者へ連絡したり、もしくは夕方以降に相談会を持ったり。

PTAの会議も基本的に夜間に設けられていますので、その会議がある時は必ず誰かが出席しなければなりません。

さあ、肝心の授業作りや授業のための資料作成、受け持っているクラス全員分の前回の授業の振り返り確認や宿題チェック、授業プランの練り直し、また教科だけではなく道徳や特別活動(学活)や総合の授業準備。

いつやりますか??いつできますか??そして、いつやらせてくれるんでしょうか??

採用された当時は、まだ独身でしたので時間の制約も特にありませんでしたが、プライベートな時間を持てるような余裕や雰囲気はなかったです。

他県の方には驚かれますが、沖縄県はどんなに経験が無かろうが若かろうが、初任者は担任を任されます。

指導教諭もいてサポートもありますが、指導教諭は2,3校掛け持ちしていることがほとんどなので、常に初任者の側にいるわけではありません。

ですから、わからないことは同じ学年の先生方に聞いたり、真似したり、試行錯誤してやりました。

ただ、真似できないことがあります。それは子どもへの対応です。

個人個人のカラーがあります。養育環境も家庭環境も価値観もそれぞれです。

子どもといえども、中学生は自分なりの考えを持ち始めています。

40人の子どもたちを、一人の身体で全てに対応するのは非常にハードでした。

ですが、子どもたちと何気なく過ごす休み時間や、他愛もない会話が当時の私には癒しとなっていました。

子どもたちも一人一人違うカラーを持っているので、大人が気付けない発見や、ピュアな優しさに触れたり、友人関係や親との関係に悩みながらも毎日登校できる逞しさがあったり。

日々学校で過ごす中で子どもたちの成長を感じられて、それぞれの目標を見つけて達成できた時や、どんな状況でも少しずつ前進できたときなど、人間として向き合いながらサポートできることが、私なりの教師の醍醐味でした。

教師として母親として苦しんだ日々

その後、結婚・出産を経験し、私も娘2人の親になり、また違う景色が見えてきました。

親として子どもを想う気持ち、家事育児と仕事の両立の大変さ、時間の制約ができ今までのように働けないもどかしさ、子どもの体調不良などで突然休まざるを得ない状況のなか自分のクラスをお願いすることへの罪悪感、土日にも職場へ行って平日にできない仕事をする、さらには持ち帰って、子どもたちを寝かしつけた後に自宅で夜遅くまでパソコンと向き合うゴールの見えない毎日。

毎日時間がなく自分の仕事さえも進めることができない、一番肝心な授業作りができない、子どもたちの自主性や創造性を学級経営の中でどうやったら活かせるかをじっくり考える時間もない、何か揉め事があれば夜遅くから始まる保護者会、PTAの集まり、そこから自宅へ戻ってももう自分の子どもたちの世話さえもしんどい。

いつしか私は自宅で笑うことがなく、いつもカリカリ怒っているお母さんと化していました。

職場では、悩んでいる生徒や複雑な家庭環境の子どもたち、クラスの子どもたちともゆっくり話をすることもできないくらい様々な業務に時間を取られます。

自宅では、自分の子どもと向き合うのではなく、パソコンと向き合う毎日。

何かおかしい、と思いながらも目の前にやってくる膨大な業務に追われ続けていました。

そこから私は心身を病んでしまい、仕事の合間に体調が悪くなり帰宅し、次の日からは朝も起きられず、仕事へも行けなくなり、娘たちが保育園へ行った後、一人で涙を流し、そこではもう自分自身で何かを判断することが出来なかったです。

「なんて自分はダメな人間だ。教師としても母親としても失格だ」

誰も私にそんな言葉は言っていません。

自分自身がそう感じながら、自分自身を限界まで追い込みながらもやらざるを得ない環境でした。

しばらく仕事をお休みするしかありませんでした。

いつしか全てに対して疲れてしまい、真っ暗なトンネルの中にいて、生きることさえ諦めてしまいたいとさえ思うようになっていました。

私の長女は当時3歳でしたが、夜中に私が不安定になり泣き続けていると「ママ?ママ?」と不安そうに私の名前を呼ぶ声はいまだに忘れられません。

自分の子どもだけは守っていかなきゃと、その気持ちだけで生きていた時期でした。

長い期間心療内科へ通い、良い先生と巡り合うことができ、少しずつ前を向くことができ、もう一度教師として頑張ってみたいとの思いで復職をしました。

しかし、先生たちが働く環境は全く変わっていませんでした。それを承知の上で復職したものの、コロナ禍の中でのリモート授業のためのパソコン研修に加え、教科書が変わる年度でしたので全て白紙状態からの授業作り、ここには書ききれないほどの業務。

ただ、コロナが蔓延し緊急事態宣言が発令されていた時は部活動は行われていませんでした。

その時期、ずっと部活動で土日もなく働き続けてきた職員たちは、「部活がないってこんなに早く仕事が終わって帰れるんだ」「自分の子どものお迎えに行ける」など、一般社会ではよくあることが、教師の意識の中にはそのこと自体がレアな経験と感じている職員が多くいました。

もちろん、子どもたちのために部活動に関わりたいと思っている職員もいます。

しかし、自分の時間や家族との時間も持てなくなるほどそこに時間を費やさざるを得ない状況があります。

久しぶりに学校現場に復帰して、改めて先生たちが子どもたちのためにと想う一生懸命な気持ちや、一人でも多くの子どもの居場所を学校に作りたいという気持ち、悩み苦しんでいる子たちの支えになりながら一緒に成長を伴走したい気持ち、子どもたちの未来に夢を与えたいと思う気持ち、その前向きな熱意のある気持ちを搾取され続けているように感じてならなかったです。

先生にも家族がいるからこそ、働き方の選択肢を!

どうにかもっと学校が開かれた場所にならないかと考えています。

❝開かれた❞というのは、地域と繋がることだけではなく、先生たちの困り感を言いやすい場所にし、必要ならば専門職をどんどん投入するようなシステム作りができればいいなと思っています。

例えば、

  • PCが苦手な職員が情報担当になり、全職員や全生徒のパソコンの不具合にも対応する業務に日々追われている状況があるので、システムエンジニアやIT関係の人材を各学校に一人配置する。
  • 様々な行事の際に必要な植物や花に水やりなどをする(休日も関係なく学校に来て水やりをする先生がほとんどだと思います)環境整備担当も、資格を持っている地域の人に職員としてやってもらう。
  • 学級費や各部活動の運営費や大会費用、試合の申込手続きなど、会計職員を配置して業務として行う。

ここでは書ききれないほどの細かい仕事が山ほどあります。

他にも専門職に任せられる業務は、一般企業から人材を投入することで学校現場の風通しを良くするきっかけにもなると思います。

様々な職歴や経験を積んだ立場の職員が増えることで、先生たちのタスクが軽減され、練った授業プランや子どもたちと向き合う時間がそこから生み出せるのではないかと思います。

以前、ある講演会で有名国立大学の教授が、「全ての学校に先生たちの保健室を作りたい」と話されていました。

私の想像ですが、学校内に先生用の保健室を作っても今の状況下で先生たちは利用するのだろうかと考えました。

本当に苦しくて、プライバシーは守られることは前提でも、常に管理職や保護者や子どもたちからも無意識に評価される先生たちは第3者の目を気にするのではないかと思いました。

またそれなりに勉強し経験も積んでいればいるほどそれぞれプライドを持っています。

校内に作れば必ず誰かに見られることがあるし、学校という子どもたちを教育する場で、教師たるものが保健室に行くなんて!という考えの方もいると思います。

校内に先生用の保健室を作ることも後々は必要になってくると思いますが、今は人間ドッグ受診と同じように全ての学校職員に心療内科受診をさせること、もしくカウンセラーの元でカウンセリングなどでもいいと思いますが、同じ環境にいる教職員以外の人に、先生たち自身の気持ちを吐き出せる場所が必要だと思います。

月に一回は全職員がカウンセリングなどに行くようになれば、誰かの目を気にすることなく通えて、気持ちのガス抜きをすることで心身を病む前の予防が出来るのではないかと思いました。

今、日本全体で教員不足が深刻化しているからこそ、人員を増やすことが最重要ですが、まずはタスクを減らし、先生たちにもたくさんの選択肢を増やしてほしいと思います。

子育て世代の先生たちは時短勤務ができたり(実際に時短勤務の制度はありますが、小中学校の先生は担任を持つと時短勤務なんてできません。

担任が不在=他の職員が代わりにクラスへ行く=申し訳ない気持ちになる)、部活動顧問も希望制にする、土日などに大会引率等をした先生は必ず代休がもらえるなど、働きやすい学校現場にしていきたい思いが強くあります。

先生たちが元気で楽しそうに教壇に立てる学校をたくさん増やしたい、子どもたちの成長を伴走するために、子どもたちが前向きに生きていける力をつけて笑顔で過ごしてもらうために、日々頑張っている先生たちを癒したりサポートしたりできる環境作りをしていきたい、と思っています。

大人に余裕があれば、子どもたちを支え、救える手立てはいくらでもあります。

お父さんも、お母さんも、先生たちも、子どもたちも、みんなが

「行ってきます」を元気に笑顔で

「ただいまー!」を安心して笑顔で

言える社会を作るための一歩として、先生たちにも選択肢を増やすための活動をしたいです

さきたろう・元公立小中学校教員
母として、そして教師として毎日必死に向き合われていたtokkeさんの姿が、文章から浮かびました。私は講師を経て正規教員として6年間勤めましたが、正規教員(初任者)になってからのあまりの仕事量の多さに心身ともに日々悲鳴をあげながら業務にあたっていたことを今でも憶えています。 tokkeさんの書かれてるように、「本当にこの業務はいつやるの?いつできるの?いつやらせてくれるの?」という感情を常に抱いておりました。1番力をいれたい授業準備ができないままに、授業をした日はなんともいえない無念さにかられる日も…。
平日は授業と授業準備をしたいところですが、授業のない時間は会議の準備や部活動の指導計画、教科外(総合・道徳・特別活動)の準備、しかしながら急な生徒指導案件があれば言わずもがなそちらが優先で、平日にやるべきことは平日に終わらず、土日部活動が終わったあと、平日を乗り切るための仕事、を毎週のようにしていました。
当時独身であった自分でさえも笑顔なしに、キリキリピリピリと過ごしておりました。ご家庭があられる先生であれば、また違う大変さや悩みがあると思います。
独身・家庭持ち関係なしに、働きやすい環境、それには、tokkeさんが書かれていように、学校が、専門知識をもった外部の方が関わるという“開かれた場所”であることはとても大切なことだと感じます。
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